院長になるまで #2

動揺の前に、瞬時に思考停止に陥りました。

「昼に急遽帰宅できたよな?元気がない妻の容態を知っていながら、いち早く顔色を見にいこう、会おうとなんで思わなかったのか?心配かけないように大丈夫と我慢させてしまったのか、、、車に乗りこむまでに、何回でも電話を入れることはできたよな?」と反芻していた気がします。昼に声を聴いてからの8時間。僕が電話を入れなかった8時間。妻は意識を失いたった一人で暗くなった部屋で倒れていただろう8時間。倒れた妻の名前を大声で叫びながら駆け寄るコンマ何秒の間、全世界の時間が止まっていた気がします。

妻の体を抱え、妻の脈を蝕知し、気道を確保しながら、止まっていた時間は瞬時だったのでしょう。すぐ救急車を呼び、自宅近くの3次救命センターに搬送してもらいました。

多臓器不全と判明しましたが、脳CT,MRIでは脳梗塞や脳出血は認めませんでした。よって、代謝性の意識障害がまず疑われました。ところが、ICU管理を続け、全身状態が日に日に改善してきても、意識だけが戻りません。毎日妻に会いたくても、当時はコロナ禍の中、当然面会禁止で、不安だけが募る日々でした。そんな中、チームの担当医が定期的に容態報告をしてくださったので助かりました。日々全身状態が明らかに改善していることはわかりましたので、ひたすら祈り待ち続けていました。そんな中で忘れもしない、午前2時、突然携帯電話が鳴りました。救命センターからの連絡でした。

(次回へ続く)

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