基礎化粧品(後編)

スキンケアならぬ心臓血管ケア。そう、高血圧により動脈硬化になって脳梗塞、心筋梗塞、腎不全などの病気になるから、回避したいのです。『血圧が高い』ということは、○○アラートがメディアから一斉発表され、スマホが一斉大音響を放つ情報なのです。このまま放置すると、『生命危機となる疾患(生活制限が加わる疾患)が迫っているぞ!』です。

考えてみると、手術室が職場だったときは、突然救急車で心臓血管が破綻してしまった重症患者さんがやってきます。健康診断で高血圧指摘されたまま放置している患者さんも多かったですが、降圧薬内服も適正血圧未到達だった患者さんもいました。なぜアラートが伝わらない?なぜ適正血圧管理できなかった?

でも、外来診療中、ようやくわかりました。現時点で自覚症状がなく、高血圧という病気は放置したら寿命が短くなってしまう病気だとは結び付かないからです。薬をのむかのまないかは患者さんに意思決定権があります。「死ぬまで一生のむ降圧薬は嫌だ」と言われる患者さんは、そもそも高血圧を放置しても脳梗塞・心筋梗塞・腎不全にならないで一生を過ごせる前提条件(つまりサイレントキラー一切無視の条件)をお持ちです。もしその前提条件が確かなら誰一人治療は不要です。

だから、そのアラートを一生懸命伝えるのが臨床医の責務と信じます。実際に、適正血圧管理に到達した患者さんの中には、生活習慣を改善し、降圧薬から離脱(あるいは減量)できることもあります。継続加療しかない場合も多いですが、診察をさせて頂かないと、僕にはその判断ができません。
3話分も使いましたが、これからの高血圧診察に、特に降圧薬開始時には『基礎化粧品』も追加しようと。そんなきっかけを頂いたSAIストーリーでした。

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