蝉(後編)

 Aさん「蝉が飛んでいなくなったよ!」

僕「蝉?近所の林にそんなに蝉がいたんですか。この間、ちょうど奥様の往診に行ったじゃないですか、その時に教えてくださいよ。最近、蝉を見ていないから見たかったなあ、、、」のんきに返答したら、まったくのお門違いでした。

実は、Aさんの耳では、何年も蝉の鳴く音がずっと聞こえていたそうです。でも、他人様には聞こえないし、自分だけなら我慢できるし、もう慣れっこになっていたそうです。その蝉の声が消えた、というのです。『あれっ?蝉の声が聞こえないぞ、、、なんでだ?あっ血圧のおかげか!!』と、わざわざ教えに来てくれたのです。

Aさんに再度尋ねます。(最初に「耳鳴りはありませんか?」と聞いたとき、「ないよ」って言っていましたよね、、、)「だって、昔、耳鼻科で診てもらって、耳は問題ないって。耳が悪いときに耳鳴りって言うでしょ?だから、私の蝉は耳鳴りとは言えないから、『耳鳴りなし』って。」「もう、あきらめてずっと飼っていたから(笑)。それがさあ、飛んでいなくなっちゃったよ!(大笑)」

さて、高血圧の随伴症状には、めまい、頭痛、動悸、息切れ、むくみ、肩こり、圧迫感、耳鳴りなどが有名です。例えば、「動悸」。直接伺うことも多いですが、心臓の拍動(ドキドキ)が速いか、遅いか、ドキドキドクンってリズムが違うか、などなどたくさんの語彙を駆使して確認します。でも、「耳鳴り」はそのまま尋ねていました。もし耳鳴りがあれば、高音「キーン」か低音「ゴォー」か、さらに深入りしますが、「耳鳴り」は「耳鳴り」としか表現していませんでした。

だから、これからの高血圧問診に『蝉飼っていませんか?』も追加しようと。そんなきっかけを頂いたSAIストーリでした。

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