院長になるまで #1 

 今回から、僕が院長になった経緯を話します。5~6話の長編になりそうですが、僕が、どういう医者か、どういう人柄かを知ってもらいたく、余すことなく精一杯表現したつもりです。どうぞお付き合いください。

きっかけは、もちろん前回の挨拶文で触れた「衝撃」でした。

それは、2022年4月のゴールデンウイーク直前、病院の管理当直を務めていた日です。いつものように、妻へ夜中に電話をかけたところ、妻にしてはめずらしく胃腸の不快感を訴えていました。「翌日まで治らなければ受診するがそこまでひどくない」と。当直業務を終えた翌昼に電話をすると、「なんだかすっきりはしないが大分治まったので受診しなかった」と。なので私も、通常業務を続け、夜7時頃部長室を出ました。 

帰宅途上の車内から妻へ電話を入れましたが不通で、何度かけてもつながりません。コール音は鳴るから電源切れではないはずなので何度もコールしました。いつもなら電話にすぐ出てくれ、労をねぎらってもらえます。もうすぐ会えるとわかっていても、その日は執拗にコールを続けました。「なんで出ないんだよ!当直明けで帰ってくる日なのに、買い物出かけたまま戻っていないのかなあ、、、まさか病院行っているのかなあ、でも俺に連絡も入らないし、それはないだろうけど、、、とにかく心配しちゃうから電話出てよ!!」と自分の都合しか考えていないイライラがほとんどのまま、夜8時自宅に到着。いつもは明かりが漏れている窓は真っ暗でした。

 玄関に入り、リビングの扉を開けると真っ暗な闇に息遣いだけがこだましています。明かりをつけた瞬間、ソファから転げ落ち、意識なく倒れている妻を発見しました。

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