在宅介護 その16 300日突破 10か月目(後編)
朝食をゆっくり食べさせてもらっていた彼女が、両眼を見開き、車いすから突然立ち上がろうと動き出す。口の中には食塊あるのに、突然大きな声を出し、僕を追いかけようと。(もちろん動けませんから、車椅子上で、もがく姿ですが。)ヘルパーさんとアイコンタクトし、車いすを玄関まで移動してもらいます。玄関で、違う発語に変わり、必死に何かを言ってくれた。
そう、発症前の日常風景!早朝や深夜だろうか病院に出勤する僕を必ず玄関まで見送り、そこで豪快に火打石を叩いてくれた、あの日常!!
彼女の叫んだ音は言葉にはなっていませんが、「いってらっしゃい」に違いありません。お互い大泣きしてハグです。僕は火打石で豪快に火花を散らせました。在宅介護開始10か月、病に倒れてから19か月ぶりの見送りです。
これなんだよ、これ、これ。これが在宅介護なんだあ!
「今を一所懸命生きて」いたら、こうして素敵なギフトを授かる。この喜び、この感激こそが、在宅介護のリアル。「何段構えになっても大丈夫だ!」と僕も威勢がよくなる。全介助の彼女へ恩返ししたい気持ちは一切ブレず、盛り上がりまくる。
でもねえ、ついつい、、、。高い山に向かうときはあれだけ笑っていたくせに、深い谷になると半端なく落ち込む。体感では、ジェットコースター以上の急速落下。僕のオノマトベの語彙力があれば、もっと伝わるのに。ビクビク?モヤモヤ?ワナワナ?オタオタ?なんて表現すればいいんだろう。とにかく僕だけが勝手に焦り始めているサインなんだあ。
こんな時には、『焦らず、慌てず、諦めず』と言霊を口に出す。「でも、これが彼女と生きている証拠なんだあ!彼女が生きてくれているから、こうして焦れるんだよ。」「愛しているよ。」素敵なギフトって毎日届いている。本当に素晴らしい。こんなにアップダウンが激しいけどね。
これが全介助のリアル介護生活。体験しないとわからなかったことばかり。
301日目を迎え、このブログってきっと役に立っていると思う。だって、こういう感じって少しでも伝わったら、在宅介護仲間が増えるでしょ。