「サイトカイン」が日常語に (後半 サイトカインストーム)

 コロナ禍、テレビの情報番組で、普通に「サイトカインストーム」ってタイトルがあり、日常生活で使われることに驚きました。でも、それがコロナ関連だからやむを得ないわ、と妙に納得もしました。
 前半で呟いたとおり、巧妙な伝達機構(生理活性分子)が背景にあります。簡単なイメージでは、ホルモンで遠くに伝え、サイトカインで近くに伝えるイメージ。ホルモンは、大学受験生物で覚えたように、大抵は決まった場所で作られ決まった働きをします。でも、サイトカインはめちゃくちゃ多様に働き、いろいろな細胞で作られ、異なるサイトカインでも同一の作用があったり、、。とっても複雑なサイトカインネットワークが作られています。さらに、そのサイトカインを阻害できる仕組みもきちんとあり、これまた巧妙です。
 さて、コロナ感染で話題になっているのは、炎症。
 炎症反応を高める炎症性サイトカインと、過剰な炎症反応を制御する抗炎症性サイトカインが、適度なバランスをとって産生・分泌され,炎症反応は終息していくはずでした。肺で過剰炎症が起こる一因には、免疫細胞がウイルスと戦うために作ったサイトカインが制御不能となって放出され続ける「サイトカインストーム」が起こったためらしい(Pathogenic human coronavirus infections: causes and consequences of cytokine storm and immunopathology, Semin Immunopathol 39:529–539 (2017))。その結果、自分の細胞まで傷づけてしまうのだろうと。でも高齢者や基礎疾患のある人の中でも、サイトカインストームが起こる人と起こらない人がいる理由はわからない。つまり、炎症性サイトカインの働きが非常に強く、抗炎症性サイトカインの働きが弱いと、臓器障害。逆に、抗炎症性サイトカインの働きが相対的に強ければ、免疫能が低下し重症感染症を起こしてしまう。

 じゃあ基本的な免疫力をどうやって維持するのか、チームSAIでは今日も発熱外来を通して、考えています。