善玉コレステロール神話 

 健康診断結果を説明する際、悪玉、善玉コレステロールの表現を頻用します。善玉と呼ばれるのはHDL。理由は、動脈硬化巣にたまった悪玉コレステロールを取り出し、最終的に肝臓に運び、胆汁酸にして捨て去ってくれるからでしたよねえ。そうそう、動脈硬化を防御してくれるわけね。じゃあ、善玉が高ければ高いほどいいのか?そうだ、「長寿症候群」って呼ぶのはどうだい!と注目されました。

 でも、最新の研究ではどうなったのでしょうか?
 今は、HDL-C 80mg/dLまでは動脈硬化疾患死リスク低下と関連があっても、90mg/dL以上ではむしろリスク増加を示唆すると考察されています。(Hirata Aら The EPOCH-JAPAN study. J Clin Lipidol. 2018より)実際、HDLコレステロールが100㎎/㎗以上に極端に高くても、狭心症や心筋梗塞になったり、頸動脈エコーで動脈硬化進行していたりすることを経験します。だから、動脈硬化を防げていないと言われても、腑に落ちます。さらに、今まで製薬会社など研究チームがHDLコレステロールを上げる薬を開発した臨床試験を何度か行っていますが、どれも途中で試験中止になっています。 


 なお、本邦の高HDLコレステロール血症の約7割は、CETP欠損とされています。(CETPとは、HDLの中のコレステロールエステルを転送するという蛋白ですから、これが欠損すれば、HDLの中のコレステロールエステルがどんどんたまり、HDLコレステロール値は当然高くなる。)後天的には、慢性大量飲酒がCETP蛋白活性を低下させ、高HDLを呈しますので、そこは盲点です! また、原発性胆汁性肝硬変では、HDLコレステロールが増加し、胆汁酸も増加しているので、しっかり鑑別して解釈しています。だから高HDL、特に極端に高値なら、肝機能チェックだけでなく、動脈硬化の評価目的に、頸動脈エコー検査を調べることも提案しています。
 
 今日も、診察室で、予約患者さんの首にゼリーを塗り、エコープローベを当てている、チームSAIでした。

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