withコロナの前からwith腸内ウイルスだったのか (前半)

これは勉強不足、医学は日進月歩、常にアップデートしていないといけないぞって自戒を込めた医業ネタです。腸内細菌叢(さいきんそう)と腸内ウイルス叢の話です。

腸内細菌叢が全身の『免疫機能に関与』している(例えば感染症リスクや生活習慣病リスクにも)から、世界各国で多種多様な腸内細菌ゲノムのデータベース化が進められていることは知っていました。また、『腸脳相関』を介して神経変性疾患の病態に影響を与える可能性が研究されていることも知っていました。

考えてみると、1000種ほどの細菌がいますから、ヒト腸内には細菌と同程度またはそれ以上の数のウイルスが存在することには、すんなり理解できました。でも、大部分が同時に細菌に感染しているウイルス、つまりバクテリオファージ(ファージ)で占められ、その他にヒトや真菌に感染するウイルス、食事由来のウイルスという分布図は想定外でした。さらに、このヒト腸内におけるファージの多様性やその生態系は未知の部分が多く、詳細が不明であるという意味を込め、ヒト腸内環境における「viral dark matter ダークマター(暗黒物質、正体不明であるという比喩)」と呼ばれ研究課題になっていることは、全く知りませんでした。

多様な腸内バイローム( a diverse gut virome)を研究した米国の論文(Johansen J, et al. Nat Microbiol. 2023;8:1064-1078.)があります。対象者(100歳以上)がイタリア人と日本人なので、興味が倍増します。百歳以上の対象者を研究しているのですが、「centenarian(百寿者)の腸内ウイルス叢は、微生物叢の産出塩を分解している」可能性があるようです。さらに、「百寿者の腸内細菌叢が作る胆汁酸には感染症予防効果を示唆する」そうです。ちなみに、100歳を「一世紀(century)を生きた」という意味の英単語で表現するってことも素敵ですよね。with コロナの前から、既にwith 腸内ウイルスだったんですね。

そしてこれをきっかけにファージを勉強しなおしたら、「ファージセラピー」分野にくぎ付けになりました。医学って本当にすごい!

(続く)

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