院長になるまで #3
電話口で、「致死的な脳出血が起こり、生命危機だ」と言われました。
昨日までの報告では、意識障害変わらないも全身状態はより改善、と聞いていました。まだ一度も妻に会えていませんが、よくなっているならいつか会えると信じて待っていたのに、ICUで全身管理しているのに、24時間集中治療なのに、どうして妻が急変したのか、搬送時に精密検査して脳には画像上異常なかったのにどうして新しく病気が起きるのか、どうして、どうして、、、でも、今は生命危機ですから待ったなしです。とにかく救命手術ができるならお願いしたい。たとえどのような結果になっても手術してもらいたい、経緯なんか関係なく生命を救ってもらいたい、その一心でお願いしました。
高リスクであるにも関わらず、緊急救命手術を執刀して頂き、その日のうちに無事終えました。術後も安定していました。深夜に集まっていただいた脳外科チームには感謝しかありません。実は、後日再出血のため再手術もありました。その後も紆余曲折あり、結局、脳外科チームには合計4度も手術をしてもらいました。僕は、どんな経緯でもどんな方法でもまったく関係なく、結果だけを望み続けました。妻の救命という最高の結果を得ましたので、チームの皆様には感謝しかありません。
それから闘病135日目に、意識障害、片麻痺、気管カニューレ挿入のまま、回復期リハビリ病院に転院できました。それからは休むことなくリハビリが行われ、気管カニューレが抜去できる日を迎えました。つまり、カニューレで発声できなかった妻が発声できるようになったのです。あの日の昼、僕だけが電話越しに聞いた妻の声。その声がいよいよ妻の口から発せられることを意味しました。その知らせを受け、翌日医療面談という形をとっていただき、妻と対面できました。