在宅介護 その2 初日

二回目は在宅介護初日。つまりリハビリ病院から自宅退院の日の慌ただしさ。

退院は朝一番。「入院生活で使ったものを入れるスーツケース持参」と前もって指示があり、搬入済み。当日は、カバン一つです。「コロナ禍なので家族は付き添い一人だけ」と指示があり、僕一人。ただ、この日に手配済みの、リフト付き介護タクシーのドライバーも到着し、初顔合わせ。まず僕が入院費の支払いや退院時書類や薬を受け取っている間、彼は、ごっつい車椅子にいる妻をそのまま専用リフトで乗車させ、スーツケースなどを積み終わっていました。あっけない退院でした。車内で、僕が彼女の手を触ると弱弱しく冷たくなっており、僕はずっと握りさすっていました。自宅近所になると、生還した現実を労い続け、涙が止まりません。その後も、彼は、丁寧な運転と見事な車椅子さばきで屋内までサポートしていただきました。寡黙でもなく、饒舌でもなく、確実に寄り添う彼に、彼の職業に、謝意を伝えました。

さて、自宅には親族が応援に来てくれました。搬入済みの介護ベッドに妻が移動し休んでから、訪問診療の主治医や看護師、ケアマネージャー、ヘルパーさん所属の各事業所との契約など、矢継ぎ早に署名する書類が手渡されます。僕自身も安堵していいのやら、張りつめていた緊張が解けたのやら、あの空白の8時間の部屋に今新しい余生の初日が始まった現実を噛み締めすぎたのやら、次第に意識がもうろうとしてきて、顔面蒼白になっていたそうです。親族に言われ、僕自身も爆睡しました。

目覚めたら、もう夕食時でした。妻とお互い顔を合わせ、大泣き。ただこの瞬間が迎えられている感謝の気持ちが溢れ、嗚咽から瞬時に号泣でした。お互いの琴線に触れたのか二人とも全く同じタイミング。その日は親族も一緒に泊まり3人で過ごせましたが、我が家での身体介助(おむつ交換や食事介助、更衣介助など)もどうやってこなしたのか?まだ数か月前のことなのに、全く覚えていません、無我夢中だったのでしょう。

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