プルスとレート(前半)

研修医のころ、ベテラン看護師さんに「先生プルスは?」とよく聞かれました。(脈拍数の英語pulse rateの最初の単語をローマ字読みにした業界用語。)心臓血管分野に行くとICUの看護師さんに「先生レートは?」と変わりました。(心拍数heart rateの最終単語の発音を日本語の音に似せた業界用語。)そもそもプルスが心臓から出された血液の流れによって動脈が1分間に拍動した回数で、レートは心臓自体が1分間に拍動した回数だから、別の物差しですが。さて、今は、家庭血圧記録を見ながら、患者さんとその数字の重要性を話していますが、よく脱線してしまいます。

例えば、健康診断で「心電図所見に心室性期外収縮あり」のため、要精査と指摘されたCさん。特に医療機関受診歴も特記すべき既往歴も自覚症状もありませんが、健康診断結果を持参して、当院を受診して下さいました。

早速、Cさんの心臓の聴診を行います。ちょっと長めに行うと、聴診器では『ドキドキドクン』と鼓動を聴取していますが、脈拍を触知している僕の手では『脈が触れないドクン』です。これが「心室性期外収縮」を疑わなければならない所見です。

僕たち人間の心臓は一日約10万回一定のリズムで拍動していますが、精密機械ではないので何回かはズレます(まあ多くは遊びみたいなズレですが、中には危険なズレがあるので要精査ですよ!)。このズレが期外収縮(起源が心室ならさらに心室性)。Cさんに、「これが危険かどうかを24時間心電図(ホルター心電図)で精密検査しましょう」と提案しました。幸いに、Cさんには、治療が必要な不整脈ではないし、心臓エコーでも心疾患がないと判明しましたので、これで一安心でした。もちろん、不整脈が検出された事実はありますので、「ホルター心電図検査を来年も行い、不整脈が増えたり、形が変わったりしていないことを経過観察させてください」とお伝えしてあります。

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