血圧の上と下の間?(後半)

 収縮期血圧(上)は、高齢期になってまずます増加し、拡張期血圧(下)は50歳代をピークとして以後は不変か減少傾向になります(アメリカの論文で人種別のグラフですが詳しく解析されている論文があります。L.Burtら Hypertension. 1995;25:305–313)。
さて、高血圧疾患の家族歴がある、喫煙者のHさんは、診察室での血圧が139/78と高め。正常血圧が悪化した「高値血圧」つまり「高血圧症」と確定診断されません。「まだ大丈夫っすね、よかったあ」とHさん。高血圧随伴症状なしと言い張るHさんでしたが、『でも脈圧61、平均血圧98と高く、動脈硬化リスク疑いあるし、一度検査はしましょうね』と提案しました。
 実は、脈圧は1回拍出量を反映します。(心拍出量とは一回拍出量×脈拍。)だから脈圧が狭いと、心拍出量を保つために頻脈になる、血管内脱水,大動脈弁狭窄症、不整脈など低拍出状態を疑います。逆に、脈圧が広いと、発熱,貧血,甲状腺機能亢進症、大動脈弁閉鎖不全症など高拍出状態が潜んでいないかを疑います。
 Hさんに、矢継ぎ早に質問攻撃です。太い血管も細い血管も動脈硬化を疑いますから、当然です。胸部聴診では心雑音なく、検査を行い、家庭血圧を朝と夕の二回記録(もちろん自分でできる決まった時間ならいつでもいいと条件緩め)し、再診としました。検査結果(胸部レントゲン、心電図、血液検査)から、高血圧リスクが見つかり、まずは生活習慣を一緒に分析。そして三か月後、家庭血圧記録から高血圧症と確定診断し、降圧薬管理を開始。内服治療後、適正血圧を維持できたHさんから、「最近体の調子がいいし、肩こりもなくなったよ、疲れもたまらないね。まだフットワークは軽くないけどね」と。
 やっぱり、Hさんにも隠し玉があった、SAIストーリー後半でした。

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