血圧の上と下の間?(前半)

 降圧管理強化を最初は渋っていたGさんは、一日2回の測定はもちろん、毎月のトレンドまで分析しているので、毎回プレゼンが楽しみです。ある日、「俺の血圧の間は40ぐらいだけど、『60ないとよくない』って誰かが言っていたぞ、大丈夫か?」と質問。「さすがGさん、鋭い!でも、『60mmHg以上なら要注意』の聞き違いですよ」と返答しました。
これは鋭い質問。血圧記録は上と下の数字を記入するだけですが、その間には大切な情報が隠されています。上下の血圧の差は、『脈圧』と呼ばれ、『平均血圧』とともに有用な指標です。
 まず、脈圧は「収縮期血圧(上の血圧)-拡張期血圧(下の血圧)」で求め、平均血圧は「脈圧÷3+拡張期血圧」、式を実用的に表すと「上x1/3+下x2/3」で計算します。脈圧は太い血管の動脈硬化の進み具合を反映し、40mmHg前後が基準範囲で、60mmHg以上で動脈硬化リスク予測因子とされています。一方の平均血圧は細い血管の動脈硬化の進み具合を反映し、90mmHg前後が基準範囲とされ、心血管イベントリスク予測因子とされています。
 動脈硬化は細い血管から太い血管に進行するから、まず平均血圧上昇、続いて脈圧増大です。ただ、これを治療目標にする計画は現実的ではありませんし、どこまで意味があるのか疑問です。(人工心肺で心停止中は完全体外循環に生命維持してもらっていましたが、実は拍動流でなく定常流なので,平均血圧はしっかり維持されますが脈圧はほぼありませんでしたしね。) 
「計算すると、血圧118/76、脈圧42、平均血圧90と非常に良好な範囲で安心ですね」と、Gさんも納得です。きれいな測定結果を記した血圧手帳に、一応「脈圧」と「平均血圧」の数字を追加記入した SAIストーリー前半の部でした。(続く)

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