プルスとレート(後半)

30年以上前の名著『ゾウの時間、ネズミの時間』(本川達雄 著)をご存じですか?引用すると、「ハツカネズミのレート600回/分、ゾウのレート20回/分」だそうです。彼らの寿命は「ハツカネズミ2~3年、ゾウ70年位」。ここからが興味深くて、ゾウの方が長生きと思いがちですが、彼らそれぞれの時間の流れがあり、「ハツカネズミの時間は速く流れ、ゾウの時間はゆっくり流れている」そうです。つまり、「体の大きい動物ほど心臓はゆっくり打ち、時間の流れもゆっくり」のようです。さらに、「心臓が鼓動する速さで寿命が決まっているから哺乳類の心臓は一生に約15億回打つ」と考察されています。

確かに、小動物の寿命(僕ら人間から見た)は短く(レート早い)、大動物は長い(レート遅い)イメージです。でも僕たち人間を例えばレート70回/分で計算すると寿命は約30~40年!実際に80歳の現代人はとっくに心臓の拍動は30億回に達していますから、一生ならぬ二生?を生きているのでしょうか。文明(栄養、衛生、医療など)のおかげなのでしょうが、「寿命が縮まった思い」をした僕も、妻と一緒にもう二生目の余生を歩んでいるなら、それだけで感謝ですね。

ちなみに、レートは、自律神経の働きの影響を受けて変動します。当然、人間の心理状態に関連するストレスや緊張が続けば、自律神経の働きでレートは増加します。「脈が速いと早死に、遅いと長生き」するエビデンスは全くありませんが、心不全の患者さんに対して行う、交感神経を抑え心拍数を減らす薬(βブロッカー)を少なめに使い心臓を少しずつ休ませる治療には、生命予後改善が証明されています。だから、僕も自信をもって治療を続けています。

こんな感じで、ホルター心電図の結果を患者さんと一緒に話しながら、ネズミとゾウに話が脱線し、診察時間が長くなってしまうSAIストーリーでした。

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