在宅介護 その9 全失語

医者の間でカイザーは帝王切開の略称ですが、本来は切開分娩の誤訳です。どうも、ジュリアスシーザー(ユリウスカエサル)が「ユリウス家の分家」という意味だったが、偉大な皇帝となり、「カエサル=皇帝」となった説が有力のようです。そのローマ皇帝の名言に「人間ならば誰にでも,現実のすべてが見えるわけではない。多くの人は,見たいと欲する現実しか見ていない」があるんですよ。

今回、彼女が全失語と診断されてから、僕は、「知っていることしか見えないし気づかない。だから全く分からない、、、」と落ち込んでいます。本当に名言通り。

さて、全失語とは、言語中枢の完全な崩壊状態。具体的には、言葉を話すこと・話を理解すること・話を復唱すること・言葉を読むこと・言葉を書くこと、すべて重度の喪失です。発語があっても、その場に合った発語ではなく、意味不明な言葉(ジャルゴン)となります。僕ら夫婦も、阿吽の呼吸でも、頭の中で考えていることを言葉に変換し、さらにそれを相手が理解してもらえるような表現で会話をはぐくんでいたんだね、必ず言語化した思考過程だったわけだ。

でも、非言語的コミュニケーション能力もあるからね!再帰性発語や同時発話で、音韻だけでなく発話能力も改善中だし、「どこかに表現方法があるはず、、、、」と悶々しています。それは僕の苦しさであり、彼女の真意は計り知れません。ただただ、愚直に信じ、ともに生きることしかできません。でも、最大限ともに生きています。新しい朝を迎えられ、感謝してから、一日が始まります、昨日と違う新しい一日をまたともに生きています。

最近は、傾眠から覚醒した瞬間の彼女から、何かを伝えたい意欲が伝わってきます。ふいに訪れるわずかな瞬間です。僕が鉢合わせないこともいっぱいあります。こんなブログも誰かに役立てばと本気で思っています。僕も介護人の皆様のブログに勇気をもらっていますから。全失語の介護をしている皆様、これからもお知恵を拝借させてくださいませ。

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